COLUMN
2021.02.16

ブーメラン型スパチュラ誕生秘話vol.2
「製造工程のこだわり」
ブーメラン型スパチュラ誕生秘話vol.2「製造工程のこだわり」

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前回、スパチュラ開発のきっかけをうかがった中で、モノづくりの根底にあるのは「シンプル・イズ・ベスト」だと話していた新井社長。今回は、製品を支えている細部にスポットをあて、成型工程におけるこだわりについてお聞きします。

 

前回の記事はこちら
ブーメラン型スパチュラ誕生秘話vol.1 「開発のきっかけ」

 

 

――製品のゲート痕※が見当たらないのですが?

※ゲート痕とは、成型時に発生する突起

成型工程では製品部に樹脂を流し込む入口(ゲート)が必ず必要なので、ゲート痕はありますよ。ほら、ここの側面の真ん中あたりに。

 

――言われるまで気づきませんでした……

 

成型屋として、ゲート痕を残したくないというプライドがありますが、工程上無くせないというジレンマもあります。

また、成型の合理性を考えると、側面ではなく平らな面に、径を大きくしたゲートを配置する方が作りやすいのですが、合理性に欠けたとしても、指に触れる箇所にゲート痕は残したくなかった。これがこの製品の隠れた特徴ですね。

 

――「製品の精度」と「製造工程の合理性」は、やり方次第で両立できるということでしょうか?

 

そうですね。スパチュラに限らず、樹脂成型でイメージ通りに仕上げる=精度を高めるために考慮しているのは、ガスベントやランナーの工夫、ヒケの想定などですね。

 

 

――ガスベント?ランナー?

 

ガスベントとは、金型にある、樹脂は漏れないが空気は抜ける隙間のことです。ガスベントを設けることで成型不良を防ぎます。成型には欠かせない施策ですね。

樹脂を金型に充填する際には、ヒケ※を計算し、充填圧力を調整します。そうすることでゲート位置から離れた箇所へもきっちり樹脂が流れ込み、設計通りの形状になるんです。

※ヒケとは、樹脂が固まる時に体積が収縮すること。

ランナーというのは、製品面に樹脂が到達するまでの通り道のことです。一つの金型から複数個成型する場合、充填される樹脂を枝分かれさせる必要があり、その枝の部分をランナーといいます。

 

例えば、ご家庭のキッチンなどで必ず見かけるこのヒンジキャップの場合、ゲート痕が手前か、奥のヒンジ側かで仕上がりが変わってきますが、手に触れる位置を避けてゲートの位置を決めることが多いです。そういった成型工程上のランナーやゲートの位置も含めてデザインを決めています。

 

 

――なるほど。「製品の精度」と「製造工程の合理性」の双方を追求することが良いモノづくりにつながる、ということですね。

 

そうですね。スパチュラはあくまでクリームの補佐的な立ち位置ですから。高価だと需要がありません。コストを抑えながらも、製造工程の合理性のみで設計せず、デザイン性とのバランスも考慮して製品設計をしたのが良い製品になった要因だと思っています。

 

納得のいくデザインができた後は、いかにお客様に満足してもらえる品質・価格で届けられるか。ひとつひとつの工程が完成品に結びついていく、ということがわかりました。次回はブーメラン型スパチュラの「プロモーション」についてお聞きします。

 

続きはこちら
ブーメラン型スパチュラ誕生秘話vol.3「我が子のように」

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